オーディオ評論家土方久明氏が語るCoda W
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スピーカーにアンプを内蔵する、いわゆるアクティブタイプのスピーカーの人気が上がっている。以前であれば、パソコンと組み合わせるようなチープなものがほとんどで、音質にこだわるオーディオファンや音楽ファンから注目されることはなかった。
しかし、スピーカー単体で音を出すというシンプルな構成で、デザインもじつに洗練され、限られた部屋のインテリアの中に音楽を共存させたいという現在のライフスタイルに強く合致する。何よりも最近のアクティブスピーカーは、内蔵アンプの音質が向上し、DSPによる音の補正技術が進化したことで、かなり音が良い。
実はKEFは、イギリスの老舗オーディオブランドでありながら、以前からアクティブ型スピーカーを探求してきたブランドである。現在は、アンプを内蔵しない既存のスピーカーLSシリーズとともに、LS60 Wireless、LS50 Wireless II、LSX IIなど複数のアクティブスピーカーをラインナップし、人気を博している。
そんなKEFが新コンセプトのアクティブスピーカー「Coda W」を発表した。本モデルは、近年のワイヤレス・オールインワンスピーカーの潮流にありながらも、単なる利便性重視の製品とは一線を画す、明確な思想を持ったモデルだ。
※東京・青山の直営店 KEF Music Gallery では、Coda W の試聴が可能です。
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Coda Wの外観に目を向けると、直線を基調とした端正なキャビネットに、美しくも落ち着いたカラーフィニッシュ(5色から選べるのが嬉しい)が与えられており、家具的な佇まいを強く意識したデザインとなっている。イタリアのデザインスタジオと共同で仕上げられたそのフォルムは、生活空間の中に自然に溶け込むことを主眼に置いたものだが、オーディオにガッツリとハマった僕から見ても、違和感がなく、KEFらしいオーディオ的な機能美も感じさせる絶妙なバランス。トップパネルには物理ボタンが配置されており、アプリ操作に依存しすぎない点も含め、現代性とクラシックな操作感の両立が図られている。
サイズは高さ285mm、幅168mm、奥行き268mmと、ブックシェルフとしてはやや余裕のある寸法で、1ペア約11.3kgという重量も相まって、設置性よりも音響性能を優先した設計であることが読み取れる。このサイズから確保される内部容積は低域再生に寄与しており、単なるデスクトップ用途には留まらない、リビング空間やオーディオルームでの本格的な音楽再生を前提としたスピーカーであることが明確だ。
ユニット構成の中核には、KEFの象徴ともいえる第12世代Uni-Qドライバーが採用されている。5.25インチのミッド/ウーファーの中心に1インチのアルミドームトゥイーターを同軸配置したこの構造は、音の放射点を一点に集約することで位相特性を高度に整え、リスニングポジションに依存しにくい広い音場と自然な定位を実現する。これに加えて、本機は完全アクティブ構成を採用し、低域用70W、高域用30WのClass Dアンプを各ユニットに独立して割り当てるマルチアンプ駆動を行っている。余談だが、マルチアンプ駆動方式は、1つのユニットに対して最適化されたアンプをあてがうことで再生品質を最大化させる、ピュアオーディオファンでもごく一部のスーパーマニアが行ってきた方式だ。
さらに、DSPによるクロスオーバーと制御にはKEF独自のMusic Integrity Engineが用いられ、ユニット間の統合や位相補正、ダイナミクス制御まで含めた総合的な最適化が図られている点も見逃せない。この点は、アンプとスピーカーが別体となる既存のシステムでは実現できない、一体型スピーカーならではのアドバンテージとなる。
入出力端子の充実度は、このモデルの性格を端的に示している。HDMI ARCを備えることでテレビとの連携が可能となり、光デジタル入力やUSB Type-Cによる最大192kHz/24bit対応のデジタル入力、さらにRCAライン入力に加えてMM対応のフォノ入力まで内蔵している。Bluetooth 5.4ではaptX AdaptiveおよびLosslessにも対応し、ワイヤレス再生の質も高いレベルにある。加えてサブウーファー出力を備え、システム拡張にも対応する一方、左右スピーカー間はUSB-Cによるデジタル接続を採用しており、信号伝送の精度にも配慮されている。つまり、Coda Wは、アナログからデジタル、さらにはテレビ用途までを一括して受け入れるハブとしても設計されており、購入後の拡張性まで配慮されているのだ。
音質に関しては、KEFらしい整然としたサウンドをベースにしながらも、従来のモニター的傾向より一歩踏み込み、スケール感と音楽的な豊かさを意識したチューニングが印象的である。Uni-Qドライバーによる音像定位は極めて安定しており、ボーカルは空間の中に自然に浮かび上がる。左右への広がりと前後方向のレイヤー感もバランスが良く、過度に演出的にならないリアリティがある。低域は約41Hzまで伸び、サイズ以上の量感とエネルギーを感じさせるが、単に膨らむのではなく、音楽のグルーヴを支える質感を伴っている点が評価できる。さらにDSP制御の恩恵により、小音量時でも情報量が失われにくく、大音量時にも破綻しにくいというレンジの広さを持ち、日常的なリスニングからしっかりとした鑑賞まで対応できる懐の深さを備えている。
以下にこれらの内容を深く解説した動画「オーディオ再発見!CP抜群パワードスピーカーCoda W 」にてご紹介。様々なソースで聴き比べをしながら、特徴を解説。
総じて、Coda Wは現代の生活環境における最適な音楽再生の形を提示するプロダクトである。さらに、評価したいのは、オールインワンという括りの中で発展性が限られてきたアクティブタイプのスピーカーでありながら、入力端子が多く、アナログプレーヤーやスマホ、テレビなど個別の機材との親和性が非常に高い点だ。つまり、シンプルな構成の中に高い完成度を凝縮し、「音楽を聴く」という行為そのものの質を引き上げることに主眼が置かれている。その意味で本機は、利便性と音質の両立というテーマに対するKEFのひとつの回答であり、現代的Hi-Fiの完成形の一端を示す存在と言えるだろう。
※東京・青山の直営店 KEF Music Gallery では、Coda W の試聴が可能です。
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